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私は校門横に作ってあった雪だるまを見つける。それはきっと廃校となる校舎を最後に彩る為に、みんなで一生懸命に作ったのだろう。
そういえば子供の頃、作ったな。……拓也と。
中学生の頃には、学校に通う時に意味もなく拓也と雪の中を駆けていた。
高校生の頃には、付き合っているという何とも言えない気恥ずかしさに、拓也にふざけて投げた雪のかけら。
もっと、もっと、思い出はある。
降り続ける牡丹雪のように私達の思い出は無限にあり、私はもっと楽しかったことを思い出そうと空を見上げる。
すると私の頬に牡丹雪がそっと触れ、牡丹の花が崩れるように溶けていった。
「……あ」
私は、その雪の結晶だったものに手を触れる。
それはあの日、流した涙みたいだった。
私は十年経っても成長していない。
また拓也に縋りつこうとして、その手を振り払われてしまった。
そうだよね。私に帰って来る場所はなかったんだ。
やっとそのことに気付き、今度こそ帰ってこないこと決意した私は、思い出の高校を後にしようとした。
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