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「綾子」
その声に振り返ると目の前には拓也が居て、同窓会を抜け出して追いかけて来てくれたのだと分かる。
「大丈夫か?」
その言葉に心臓がドクンと鳴る。
ああ、やっぱり隠せてなかったんだって。
私はこの十年間で、本心を隠すのが上手くなったと思っていた。
そうならないと、あの厳しい世界で生きていくことは出来ないから。
辛くても苦しくてもそれを表に出さずに、ひたすら突っ走るしかなかったから。
いや、他人にだけでなく自分にも本心を隠していた。
……私は自分の限界に、とっくに気付いていた。
周りを見れば才華にあふれ、その持ち前のセンスでデザインを開花させ、それを形として彩っていく同僚達。
それは私には絶対思いつかないものばかりで、努力では埋められないものがあるのだと思い知った。
そんな辛い気持ちを誰にも言えなくて、若い才能に嫉妬する自分の醜さに苦しんで、才華のない自分を認められなくて、私は私にずっと本心を隠して生きていた。
でももう限界で、体を壊してしまい現在は休職中だった。
そして今日、私はこの町に逃げ帰って来てしまった。
そんな気持ちを隠していたつもりだったけど、やっぱり両親も幼馴染も元彼も、誤魔化すことなんて出来なかった。
情けないよね。みじめだよね。
もう、消えてしまいたい……。
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