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夜の秘密
「ん?」
廊下の隅っこに佇む人影。その手が床に伸び、何かを掴む。そのままそれを眺めて…
「吉田さん、掃除しなよ」
「あっ、ごめん」
真面目なクラスメイトの女子に怒られる。僕も彼女と同じくらい真面目で静かなんだけどなあ。
僕は、自分の手に握られたそれが、何なのか理解ができなかった。
それは、普通のノートより小さいけど、とても分厚くて、しっかりとした布のカバーがかかっていた。カバーの内側の袋にはペンが入っていた。結構高そうな。そこでカバーをめくって表紙を見たものの、何も書いていなかった。それが2冊。中身…は、気になるけれど、そんなプライベートなものに勝手に触れるわけにはいかない。そこは僕の人間性が許さない。
それより、どうしよう。誰のものかわからない。その本を観察してみたけれど、それと言った手掛かりはつかめなかった。中身を見たら、名前が書いてあるだろうか。どこのクラスとか、文字の感じとか。それのためなら、見てもいいと思う。正当な理由さえあれば、僕は何でも行動する。
ペラペラとページをめくればめくるほど、僕の驚きとハテナはますます膨らんで、弾けそうになった。
そこには、生命の始まりだとか、生物の生死だとか、人類の発展だとかが、まるで書いた人がそこにいたみたいに、生々しくリアルに描かれていた。と、いうのも、文字で「書かれて」いたのはほんの(?)数百ページで、あとは絵やよくわからない線で「描かれて」いた。
僕は猛烈に気になる。これは誰のものなのだろう。これを、自分で書いたのだろうか。としたら、いつ、どこで、どんなふうにして書いたんだろうか。
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