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11年目の冬。女の子はもう、僕にプレゼントを持ってこなくなった。
プレゼントはもらえないけど、一つ嬉しいことは増えたよ。
女の子は毎日ある男の子と一緒に帰ってくるようになったんだ。真っ白い雪に響く、鈴みたいなあの子の笑い声が聞こえてくる。
楽しそうでよかった、ほんとうに。
言いたいこと、言えたんだね。
「あ、そうだ忘れてた」
「お、もしかして!」
「はいこれ。誕生日おめでと」
「やったーー!何これ何これ」
「開けてからのお楽しみ!あとこれチョコね」
「うおおまじか、うまそ、食べていい?」
「えーここで?しょうがないなぁ」
男の子の手には丁寧にラッピングされたチョコレートの箱が見える。お菓子の腕も相変わらずみたいだ。
「そういえば心桜って毎年あの雪だるま作るよな、しかもおんなじ飾りで。あれなんなの?」
「ああ、かわいいでしょ。大変お世話になってましたよ、毎年毎年。」
「お世話に?なにそれどういうこと」
「はいはいいいから食べて。溶けるよ」
「うわやべ、っていやこんな寒いのに溶けるかよ!いや食べるけども!いただきます!」
もうすぐ、この街にも春がやってくる。
もし良ければ、来年も僕を作ってよ。
それでまた、楽しい声を聞かせて。
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