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若干しゅんとした私を見て、委員長は眉をピクつかせた。そのまま目尻を少し釣り上げて先生の方に視線を送る。
「ん、先生? まさか『毎日ここに来る』こと、隠して勧誘したんですか?」
「だ、だってええええ! それ言ったら断られるんだもんんん!」
委員長が詰問調になった途端、進藤先生のキャラクターが崩壊した。十歳までは離れていないだろうが、それなりに歳上であるはずなのに、完全に委員長の方が力関係が上に見えた。
「でも……榎本さんは、なんで『毎日ここに来る』ことに気が付いたの?」
委員長は先生に圧をかけながらも、私に問いかけた。
私は道中のことを思い出しながら返す。
「先生はここに来る途中で『委員会でしかB棟に来ない』という発言と、B棟への道を『毎日通ってる』という発言をしていたので……何て言うか、嫌な予感がしました」
「嫌な予感、ね」
委員長は苦笑を浮かべた。
しかしすぐにハッとした様子で、顎に人差し指をあてながら首を傾けた。
「あれー? でもそれはあくまで先生の立場での発言でしょ。生徒が毎日通うとは、限らないんじゃない?」
私は首を横に振った。委員長の反応がなんだか空々しくて、割と強めにブンブンと振った。何となく試されているような雰囲気が嫌だった。
「そもそも……生徒会活動の一環として委員会があるんですよね。つまりは活動を主導しているのは生徒です。先生はあくまで管理者であり責任者。要するに先生が毎日通っている時点で、そこには管理すべき生徒が存在しているってことでしょう」
少し語気が強まった私を諫めるかのように、委員長は柔らかい口調で発する。
「……なるほど。確かにその通りね。榎本さん、結構、鋭いんだ」
「いや……別に」
委員長はそのまま窓際の机の前まで歩くと、椅子を一つ引いた。そして私に向かって手招きをしながら、
「座って話そうか」
と言って、微笑んだ。
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