莉音(りおん)

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 妹の名は莉音(りおん)という。まだ五歳になったばかりだった。わたしとは六つ違い。年が離れているせいだろう、わたしは妹が可愛くて仕方がなかった。小さな莉音もわたしによくなついていた。仲良し姉妹だ。だから喧嘩など一度もしたことがない。近所で遊ぶ時は、よく妹を連れて行ったものだ。  前日の夜半まで降り続けた雪が止んだ早朝のこと。鈍色の空の下、母にふかふかのフード付きコートを着せられ長靴を履いたわたしと莉音は、一面の銀世界と化した学校のグラウンドに忍び込み、雪遊びに興じていた。わたしたち以外には誰もいない。  きんと冷えた空気にほっぺたがピリピリしたのを覚えている。ふかふかの雪野原は白くて清潔で足あと一つない。のっぺりした灰色の空から今にもまた雪を落ちてきそうだったが、降ってきたらすぐに帰ればいい。家から学校までは子どもの足で二十分ぐらいかかった。雪の降り積もった道を歩くのは慣れていたし、冬になったら当たり前だったから、それぐらい何でもなかった。
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