出会い

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出会い

「かんぱーい!!」 威勢のいい音頭と共に始まった食事会は、アルベルトが、同僚のエルド・クラインに誘われて参加した会だった。 近頃、部屋にこもりっきりで書類仕事に勤しんでいたが、息抜きが必要だと言われて無理やり連れてこられたのが、この酒場である。普段、あまり来ない店ということもあり、周りに「軍の人間」だという自分たちの身分を知る者はおらず、気楽に酒が飲めると踏んで選んだ店だ。 「さあさあ、アルベルトも飲んで飲んで!今日は、息抜きなんだからパーっとやろうよ」 にこにこと人好きのする笑みを浮かべながら、仏頂面のアルベルトの肩に腕を回すエルド。錦糸のような美しい金色の髪がさらりと流れるのを横目に、アルベルトは酒の入ったカップをぐいっとあおる。 「お前が飲みたいだけだろ」 「あ、バレてた?」 「いつからの付き合いだと思ってるんだ」 さすがは軍に入った頃からの戦友、といったところか。相変わらず鋭い同僚に、エルドは広い海を思わせる紺碧の目を細めて、ふふと笑みをこぼした。 「だって、王宮にこもりっきりで書類仕事ばっかりやってると退屈でさ〜。外に出て、体でも動かしてないとなまっちゃうし」 「軍隊長が仕事をしてくれないと、部下から相談を受けたところだが?」 ギロリと睨まれたエルドは、「ん?なんの話かな?」だなんて笑って誤魔化している。一方のアルベルトは深いため息をついて、カップに口をつけた。と、そのとき──。
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