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「イタタタタタッ!!!」
男の手をアルベルトが捻り上げ、女から遠ざけた。「アルベルト!」と隣からエルドに呼び止められたが、男を捻り上げる手が弱められることはなかった。
「何すんだ!この野郎!!」
「自分から酒を被っておいて、何が弁償だ。……俺が見ていなかったとでも?」
アルベルトの威圧的な視線に、思わずびくりと体を震わせる酔っ払い。
「やるなら相手になってやるぞ」
どすのきいた声に、酔っ払いはさらに体を縮み上がらせた。二人のやり取りに野次を飛ばしていた周りの客たちも、ごくりと息を飲んで二人を見つめている。
「おい、もしかして、あの人軍の『鬼の軍隊長』って言われてる、アルベルト隊長じゃないか?」
「戦で負けなしの、あの軍隊長か⁈」
「おいおい、そんな人相手に絡んで大丈夫か」
ガヤガヤと周りが騒ぐ中、周囲から聞こえてきた噂話。「鬼の軍隊長」といえば、冷酷無比、残虐非道の人物だと市民の間でも噂になっている人間だ。酔っ払いは、絡んだ相手がその「軍隊長」だと分かり、「す、すみませんでした!!」と慌てて態度を一変させた。
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