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2.科学と魔術の交差点
その昔、世界には魔術と科学が交わることなく存在し、文明は居住する地域次第でいずれかに寄った発展を遂げていた。
個人レベルでの接触はずっと昔からあったらしいが、人類が大きな海を渡り異なる文明域と初めて接触したとされるのは公式には二百年ほど前になる。
それから双方の文明は瞬く間に融合し、魔術は学問として技術、知識体系に組み込まれた。
それから、世界は爆発的に進歩した。
地上交通機関は低空へ広がり、個人間で思念の通信が確立され、一次産業は環境の是非を問わなくなり、魔術でタービンを回し莫大な電力を生み出す魔力発電が主流となった。
(直接電力を産出する魔術も開発されたがあまり効率が上がらず従来のタービン式に回帰した歴史がある)
再生医療も圧倒的に進んだ。今や多くの部位が無尽蔵に再生可能であり、四肢はもちろん、条件は少し厳しいが内臓も再生出来る。歯科治療など百年以上前から虫歯の発生イコール抜歯と再生が常識だ。
そして三十年前、人類の叡智はついにひとつの頂点に達した。
再生医療の究極目標。それも、全身を蝕む癌細胞だろうと死してなお病原菌絶えぬ疫病だろうと全身挫滅の挽肉だろうとものともせずに生き返らせる、その過程で先天性疾患すらも無かったことに出来る、あらゆる学問の集大成。
“魔術的完全再生”
人類は死をも克服した。
してしまった。
そして、その福音は残念なことに新しい問題を伴ってやってきた。
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