bo - sho 宵闇にひとり揺蕩う

芒硝【ぼう－しょう】

━━皮下組織の賦活作用、修復作用などがあり、あせも、ひび、あかぎれ等の予防にも効果があります。
　　　[日本浴用剤工業会ＨＰ]より

　浴槽に湯を張ると、マミは入浴剤を溶かした。
　このところ疲れていたので、肩までしっかり湯に浸かり全身を温める。

　そのまま首、顎、口の順に沈みぶくぶくと空気を吐きだすと、湯面には細かな気泡が溢れた。

　浴室内は湯気が充満し、壁面にＳ字フックでかけられた掃除用のスポンジや、泡ででるボディ石鹸(ソープ)の袋が揺らいでみえる。

　頭がぼっとするのはリラックスできている証拠と、今度は後頭部を壁に向け天井を仰ぎ、足は曲げたままだが全身を伸ばした。

　温泉にいきたい、なんて初老を過ぎてから言い始めることだと思っていたが、今のマミは自宅の風呂を温泉に変えたいと思うほど、休息を求めていた。

　マミは旅行するなら色々回りたい派なので、宿泊はビジホで構わない考えだ。

　泊まれて雨風が凌げればよく、食事にも拘らない。
　だからこれまで温泉とは無縁の生活だった。

　半年後には、青い海と白い砂浜が待っている。
　そこに温泉はないが、ワクワクするようなアクティビティが沢山あるはず。

　今が頑張り時！　と顔面に湯をわさわさかける。

「よし、やるぞ」

　勢いよく立ち上がると、大波になった湯がザパァと溢れた。
　湯量は減ってしまったが、明日の洗濯に使う分は、濯ぎ一回分くらいまでなら辛うじて残っていた。