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夏美がそう現実逃避を始めた頃、ギィ、と重いドアが開く音が聞こえて、弾かれるように顔を上げた。複数の人がこちらに向かって歩いて来ている。夏美も、ここに来るときに下った階段を降りて来ているようだった。
次第に足音が近くなり、夏美もその音を聞いているうちに緊張し始めてしまう。もしここに来たらどうしよう、悪いことはしていないが、万が一殺されるようなことがあったら……と考えると、自然と俯き唇に力が入る。
「この者です」
夏美の予感は当たり、男たちは夏美の目の前で足を止めた。人生で生きてきたどの瞬間よりも心臓が激しく鳴る。
「おい、顔を上げろ」
「……」
自分に言われているのだと夏美は理解したが、なかなか身体が動いてくれない。なんとか時間をかけて、無理やり顔を上げて男の顔を見ると……。
(あ、アイザック……!?)
そこに立っていたのは、昨晩ワンナイトをともにしたあの男、アイザックだった。
「お前……」
夏美は檻の柵に手をかけて男に訴えた。
「私、何も悪いことはしてないんです! お願いします、ここから出してください!」
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