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廊下に出てみると、天井は普通のホテルの倍以上に高く、大きな窓が切り取られている。床は石畳で、あまりの空間の広さに夏美の履いているヒールの音が響いた。
(来るときは目隠しされてたからわかんなかったけど、なんかお城みたい……)
アイザックと初老の男性が歩く後ろについていく。昨日はベッドでの姿しか見ていなかったので気づかなかったが、立ってみるとアイザックはすらりと身長が高かった。
(確かに手とか、大きかったもんなぁ……)
昨夜のことを思い出しながら考えていると、前にいた二人が立ち止まった。そして部屋のドアを初老の男性が押し開ける。
中は、真っ赤な絨毯が敷かれた広い部屋であった。本棚が周囲を取り囲むように鎮座し、所狭しと本が並んでいる。天井にぶら下がっているシャンデリアは夏美が両手を広げるよりも大きいが、昼間であれば人工の光が必要ないだろうというほど明るい。それは、はしごでしか届かないほど、天井付近まで大きく開かれた窓のおかげである。素人目にもわかる良質な生地で仕上げられたカーテンが、部屋の格式を思わせていた。
「座れ」
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