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「ない、けど……あの、とりあえず。あそこから出してくれてありがとう。それで、私、今の状況が正直よくわかってないの。その……」
(ここで、正直に別の世界から転移してきたって伝えるべき……?)
夏美は悩んだ。かといって、他国から来たといえば、またニホンなんて国ないとか、どうやって来たとか根掘り葉掘り聞かれて、嘘を貫けない気もする。
「実は……」
「なんだ」
「記憶がないの。どうやってここに来たか」
「……は?」
「だから、私にもわかんなくて……」
「記憶がないというのは、いつからですか?」
ソンジ、と呼ばれた初老の、おそらくアイザックの執事的ポジションの男が言った。
「昨日の夜……かな。それ以降のことを覚えてなくて……」
夏美の言葉を聞いて、二人は顔を見合わせた。
「そのような例は聞いたことがありませんな。どういたしましょうか」
「ここにどうやって来たか、以外は記憶あるのか?」
「あ、まぁそれは……」
「……そうか。昨日、自分でナツミと名乗っていたしな」
「ナツミ様というお名前なのですね。確かに、あまり聞き慣れない語感ですなぁ」
ソンジはひげをこすりながら言った。
「あの……」
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