異世界に、アレ持ってきちゃいました。

24/91
前へ
/91ページ
次へ
「ない、けど……あの、とりあえず。あそこから出してくれてありがとう。それで、私、今の状況が正直よくわかってないの。その……」 (ここで、正直に別の世界から転移してきたって伝えるべき……?)  夏美は悩んだ。かといって、他国から来たといえば、またニホンなんて国ないとか、どうやって来たとか根掘り葉掘り聞かれて、嘘を貫けない気もする。 「実は……」 「なんだ」 「記憶がないの。どうやってここに来たか」 「……は?」 「だから、私にもわかんなくて……」 「記憶がないというのは、いつからですか?」  ソンジ、と呼ばれた初老の、おそらくアイザックの執事的ポジションの男が言った。 「昨日の夜……かな。それ以降のことを覚えてなくて……」  夏美の言葉を聞いて、二人は顔を見合わせた。 「そのような例は聞いたことがありませんな。どういたしましょうか」 「ここにどうやって来たか、以外は記憶あるのか?」 「あ、まぁそれは……」 「……そうか。昨日、自分でナツミと名乗っていたしな」 「ナツミ様というお名前なのですね。確かに、あまり聞き慣れない語感ですなぁ」  ソンジはひげをこすりながら言った。 「あの……」
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加