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(王子……しかも命を狙われてる……)
現実世界で普通の会社員をしていた夏美からすれば、とんでもなく遠い所まで来たもんだと思わざるを得ない。あまりにも、昨日今日で自分の置かれている状況が変わりすぎてしまった。
「ですから、私は本来あの方の執事でありますが、護衛でもあるのですよ」
「護衛……ですか……?」
こんな初老の男性に護衛が務まるのか、と思った夏美の表情を見たのだろう。ソンジは得意げな表情で、腕をまくって見せてくる。そこにはたくさんの切られた傷跡が残っていた。
「えっ!? これ全部、あの人を守ってついちゃった傷跡ですか!?」
「いえいえ、私は元軍人なのです。今となってはただの老いぼれになりましたが、それでもまだまだ現役のつもりで」
きらりと星が飛ぶようだった。おちゃめに笑ってみせたソンジに、安堵する夏美。
(もしあれが、アイザックを守ったときの傷だったら……私は一週間と生きてられないよ……)
「ご安心ください。命を狙われると言っても、刃物で襲ってくることはほとんどありません。食事に毒を混ぜられるか、移動中の汽車や馬車を橋から落とされるか……」
「いや、全然安心できませんから!!」
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