異世界に、アレ持ってきちゃいました。

32/91
前へ
/91ページ
次へ
(王子……しかも命を狙われてる……)  現実世界で普通の会社員をしていた夏美からすれば、とんでもなく遠い所まで来たもんだと思わざるを得ない。あまりにも、昨日今日で自分の置かれている状況が変わりすぎてしまった。 「ですから、私は本来あの方の執事でありますが、護衛でもあるのですよ」 「護衛……ですか……?」  こんな初老の男性に護衛が務まるのか、と思った夏美の表情を見たのだろう。ソンジは得意げな表情で、腕をまくって見せてくる。そこにはたくさんの切られた傷跡が残っていた。 「えっ!? これ全部、あの人を守ってついちゃった傷跡ですか!?」 「いえいえ、私は元軍人なのです。今となってはただの老いぼれになりましたが、それでもまだまだ現役のつもりで」  きらりと星が飛ぶようだった。おちゃめに笑ってみせたソンジに、安堵する夏美。 (もしあれが、アイザックを守ったときの傷だったら……私は一週間と生きてられないよ……) 「ご安心ください。命を狙われると言っても、刃物で襲ってくることはほとんどありません。食事に毒を混ぜられるか、移動中の汽車や馬車を橋から落とされるか……」 「いや、全然安心できませんから!!」
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加