私は悪くない

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*** 子どもたちが高学年になった、ある初夏のこと。 「夏休みどうする?」 私から声をかけてみた。 「休みがあえば、一緒に行こうか」 「そうだね、スケジュール確認して、連絡するよ」 「どの辺がいいかなあ?いくつか案をあげておくね」 ピコン ピコン ピコン ピコン 「希望があったらよろしく!」 家族ぐるみでLINEグループを組み、やりとりを続け、既に何年も、一緒に出かけたり遊んだりキャンプに行ったりしてきた。 私が、どこかに行きたい!というと、妙子さんはすぐに企画してくれた。それは毎回とても楽しかったのだ。だが、人に話しても、反応があまり芳しくなかった。私はだんだん、物足りなくなっていた。 そのうち、私は人間関係に大きな変化があった。 子どもの学校の役員を通して新たに仲良くなったママさんと話していると、なんか別のおしゃれなことがしたい気分になってきていた。 先日は、お友達のおばあちゃんが持っていた会員制のホテルの宿泊券をお譲りしてくれて一緒に旅行してきて、凄いセレブな気分だった。誰かに話さずにはいられなかったが、そのまま話すと自慢になってしまうと思い、「雰囲気だけ立派で、客室はたいしたことなかったわ」などと話してしまった。 私は、こういう体験なら大歓迎よ! "会員制ホテルに誘ってくれる友達"がいる私、素敵じゃない? こんなうまい話、もっとふってきたらいいのに! どうせなら、新しい友達に自慢できそうなことがしたかった。だが、何年も続いてきた、このキャンプグループでは、そういうことを望むのが私だけなのも、正直苦しくなっていた。それで、聞いてみたことがあったのだ。 「ねえねえ、そちらのパパさんの会社の保養所とか、ないの?」 とりあえず、聞いてみたら 「豪華なのがあったんだけどねえ、残念ながらコロナで閉業しちゃったのよ」 ちぇ、つまらんなあ。 この家族には、もう利用価値、ないかもしれないなあ。 受験も、しないって言うしな。 出掛けた帰りに寄る食事だって、やっすいファミレスばかりだし! 金銭感覚がまるで違うのよね。 だいたい、私そっちのけで夫があちら夫婦とウマが合う様子が、たまらなく不愉快だ。 とはいえ、急に無碍にもできないなぁ、という後ろめたさから、今回は自分から声をかけてみたのだ。 なのに、パパ達は仕事が忙しくて話に参加できないというのに、あちらのママはどんどん案を出してくる。私ひとりでは考えられないし決められないというのに。が、そう伝えるのもなんだか悔しくて、なんとなく流れていく情報を見ていることしかできない。 え、私にどうしろというのよ。 面倒くさい。 私は結局そのままにしてしまった。 何日か経過した頃。 「結局8月の休みは合わなそうだよね、9月の連休でOKかな?」 と、メッセージが届いた。 「うちも大丈夫だよ!」 「で、場所、どうする?」 あああ、どうしよう。私は家では夫と会話できないというのに!何も話し合ってもいない。 「どこでもいいよ、妙ちゃんの案ならなんでも楽しいから!」 困ったあげく、そう送ってしまった。 「なんかパパたち疲れてるみたいだし、うちの人も遠出はしたくないみたいで。けど、近場だと空いてるところはあまりないし、予約もとれないんだよ。キャンセル代かかるところなら取れそうなんだけど、子どもは急な熱とかあるよね。困った」 と、返事が来た。
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