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「キミが望めば、守はそれをすると言っている」  青年の表情から悲しさが消えた。  今度は少しだけ怒りを滲ませている。 「キミの側にいるとは言え、守の姿をハッキリ見ることはできないし、守と話すこともできない。ぼんやりとした守の影を見ることくらいはできるかも知れないけれど……」 「それでも、いいっ! 守と一緒に居られるならば!」  夢中で言った沙綾の肩を、軽くトントンと叩いて青年が答えた。 「まぁ、落ち着いてオレの話を聞けよ」  青年は軽く息をつき、側にあったブランコに腰をかけた。 「本当は説明してはいけないんだけど。あまりにも守が気の毒だからな……。ま、バレなきゃいいだろ。……いや、バレても構やしねーか」  沙綾に向かってではなく、自問自答しているような青年の言葉に、沙綾は混乱した。  この人は何を言っているのだろう。  皮肉げな笑みを浮かべて、青年が沙綾の方に顔を向けた。 「人が死んだら、天国に行くまでの間に審判を何回か受ける。死んでから7日目が最初の審判。それを7回繰り返し、7周目最後の審判で天国に行けるかどうかの判断がくだされる」  微妙な表情をしていたのだろうか、青年が沙綾の表情を見て、再び皮肉げな笑みを浮かべる。 「まぁそれを信じるか否かは、キミ次第。キミがどう感じるのか、オレにとってはどうでもいい。重要なのは、守の言葉。守はそれを全て放棄しようとしている。この先ずっとキミと過ごすために」  青年はブランコから、立ち上がった。  コートのポケットに手をいれて、ゴソゴソと何かを探っている。  そして何かを掴んだのか、沙綾に拳を突き出した。握った指を上にしてそっと手のひらを開く。  緑色のボタンがついた小さなスイッチだった。 「これを、あげる。守が居ないと、この先生きていけないとキミが思うのだったら、この緑のボタンを押せ。一人で……生きていけると思うのであれば、緑のボタンを長押し。やり直しは効かない。判断は一度きり。」  沙綾は息をのんで、差し出された小さなスイッチを見つめた。
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