勇者のコンディション

　勇者の青年イーサン・魔法使いの少女エレン・おじさんファイターのゴンザレス。

　三人は魔王城に突入する予定だった。しかし、突入予定日の朝......。

　「どうして何回言ってもわからないの？　ちゃんと体調を回復させてから魔王城に乗り込めばいいじゃない」

　魔法使いのエレンが勇者のイーサンに向かって叫んだ。

　風邪をひいているイーサンは鼻水をすすりながらエレンを睨みつけ、「大丈夫だ！　ほら、行くぞ！　ついてこい！」と言って宿屋を飛び出す。

　背後から、ファイターのゴンザレスが「こっちは心配して言ってるんだ！　馬鹿野郎！」と怒鳴る声が聞こえたが、イーサンは構わず走り続けた。

　イーサンは一般人の何百倍も体力があり、高いモチベーションと勇者としての誇りを兼ね備えている。意識朦朧となりながらも、立ちはだかる強敵を次々と倒して、単独で魔王城の最上階まで辿り着いた。

　絶え間なく寒気がして、体がブルブルと震える。が、これは武者震いだと自分に言い聞かせた。

　奥まで進み、閉ざされた重いドアを開ける。すると、そこにいたのは……。

　風邪をひいて、ベッドの上で安静にしている魔王だった。イーサンは驚きと困惑、そして激しい体力の消耗のため、意識を失った。