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『ゆいな相手なら許される』
『以下同文』
『ちょ、ま、うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?』
――ああ、うん……まあ、いろいろあった、よね。
あはははは、と上履きを履き替えながら遠い目をしたくなるゆいな。
最初は沙穂との一騎打ちだったのに、いつのまにか弟も亞音も、それから彼らの友人たちもみんな参戦してきて大変なことになったのだった。
しかも何故か、参戦する奴等が軒並みゆいなの敵に回る。確かに自分は運動神経馬鹿だが、だからといって数の暴力はいかがなものか!
――つ、つぎに遊ぶとしたらもう少し真っ当なルールがいいなぁ、なんて……たははは。
まあ、なんだかんだと数十人相手に無双して殲滅した自分が言うのもなんだけども。
顔を上げたひょうしに、己の長いポニーテールが背中を打った。地味に痛い。
「あてててててっ……」
いつもなら。そんなゆいなを見かけたら、誰かしらが笑うか、もしくは挨拶の一つでもしてくれそうなところなのに。
昨日は随分、学校がしーんとしている。職員室にも廊下にも明かりはついているし、人が来ていないわけではないのだろうが。
――ていうか。
ざっと、クラスメートたちの靴箱を眺めた。
――やっぱ、上履きが並んでるまんま。……殆どの人が、来てないんだろうな。
黄島沙穂、藤森亞音。二人の名前がかかれたテープの下にはちゃんと外履きの靴が入っていた。彼らもちゃんと登校しているようだ。沙穂は家が学校から一分という近さだし(ていうか学校の裏門の真正面に家があるのだから、実質徒歩十秒である)、亞音も徒歩十分なのでどうにかたどり着いたのだろう。
特に亞音は真面目な優等生だ。先生から連絡が来るまでは、何が何でも学校を休まなかったに違いない。
――元々、人が多い学校じゃないけど。
上履きをきゅ、きゅ、と鳴らしながら廊下を歩く。
――今日は特に……静かだ。冷たくて、まるで凍ってるみたいな。
歴史が古い学校なのは知っている。昔は、一学年で六クラスくらいあったこともあるらしい。
しかし、現在は町そこものの過疎化の影響もあり、中学校は最大で二クラスまで減ってしまった。使われていない教室がいくつもあるし、その一部は実質物置になってしまっていると聞いている。
かつての中学校なら、どうだったのだろうか。
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