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雪が降ってもたくさんの生徒が学校に来て賑やかだったのだろうか。昔の子どもたちは良くも悪くも体育会系で、学校を滅多に休まなかったらしいなんて話も聞くが。
――さむ。
窓の外を見る。校庭にしんしんと降り積もる真っ白な雪。朝の時間帯であるはずなのに、太陽を厚い雲が覆い隠してしまってることもあってずいぶん薄暗い。
雪が降ると静かになるのは、雪が音を吸収してしまっているからだと聞いたことがあった。確かに、雪の白さに飲み込まれて、そのまま出てこられなくなりそうな妙な怖さがあるけれど。
――いつまで降るんだろ。
早く止んで欲しい、となんとなく思った。昨夜は雷まで鳴っていて少し怖かった。雪が振りながら雷鳴も轟く、というのは実に珍しい現象らしい。
面白いと喜んでいる人もSNSにはいたようだが、ゆいなは何だか不吉な予感を暗示しているようで、不気味に感じてしまったのだった。
――止んでくれなきゃ、道も危ないし。雪遊びもできないし……。
このまま雪が振り続けて、学校が埋もれてしまって、ここから出られなくなったらどうしよう。漠然とした不安を感じながら階段を登った。自分達の教室は三階である。
と、三階まで到着した時だった。
「だから、何度言うたらわかるん!?」
怒鳴り声が聞こえた。え、とゆいなは驚く。その特徴的な喋り方は、沙穂ではないか。
「あんたがオカルト好きなのはかまへん。他の人にそういう話をしてもええ。けど、時と場面を選べっちゅーのがわからんのか!?無駄に人を不安にしてどないするん?怖がってる人もおるのに!!」
「怖がるのは自由だけど、それを強制するのはやめてくれる?わたしはただ、真実を言っただけなのに。だって気配がするんだもの」
「またそれか。その霊能力者ごっこが迷惑やっちゅーねん」
「なんですって?」
「おうおう、何でも言うたるわ。自分の話はただの霊能力者ごっこや、ホンマもんやあらへん。ただ自分が選ばれた存在になりたいだけやろ、自己顕示欲乙!」
「はぁ!?何も知らないくせに、このエセ関西人!」
「なんやの、やるってのか、あぁ!?」
しかも、誰かと激しく言い争っている。時々泣き声がBGMで聞こえてくるのがなんとも洒落にならない――一体、何があったというのだろう?
「ねえ、どうしたのアレ?」
教室の入口では、男子三人が団子になって中を覗いていた。
通称団子三兄弟――いや、本当に三兄弟なのだ。三つ子で上から順に藍沢英、藍沢貞、藍沢京の三兄弟である。
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