<8・出席。>

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 なんとなく、美冬が言いたいことがわかってしまった。ゆいなは頭痛を堪えながら、つまり、と続ける。 「殺したいほど憎い相手がいて、でもなんらかの事情で殺せないし犯罪が露見しないようにしたいと思っていた場合……ニコさんの呪いは、うってつけってわけか。どうしても殺したい人間がいるやつは、この噂を聞いて封印を解きに来てくれる、と」 「そういうことね。だから、噂を流すのは、解放されたいニコさんからすると実に真っ当な手段というわけよ」  くすくすくすくす、と美冬は嗤った。 「その封印は解かれたわ。わたしにはわかる。誰かがニコさんの人形を見つけて、その力で人を殺した!ねえ、ニュース見たでしょう?隣町で男の人が死んだっていう、アレ。あれも、内臓がなくなるっていう奇妙な死体だったっていうじゃない?間違いないわ、あれはニコさんの仕業よ」  まるで舞台の上、ミュージカルを演じる主演女優のよう。美冬は両手を広げて、うっとりとした表情で天を仰いだ。 「ニコさんは見つけた人の願いを叶えた!だから、その人はニコさんの言うことを聴かないといけない。封印を解いて、復讐を!そう、この学校の全てに滅びを!もう止めることなんかできないわ。貴女たちにも、わたしにも、止めることなんてできない。相手が何なのかわからないけれど、神にも等しい力を持っている存在なのは確か!だからわたし、それをみんなに教えてあげようとしただけ。もう終わりが近いとわかれば、人生に諦めもつく。醜い争いも必要なくなる、それもある意味救いでしょう?」 「……っ」  まるで、狂信者だ。うっとりと天井を見上げる美冬の方は僅かに上気して赤く染まっている。  さながら視線の先に、理想の美男子がいて自分に愛でも囁いてくれているかのように。少女漫画の世界、溺愛されるヒロインにでも成り代わったかのように。 「……言いたいことはわかったけど」  ゆいなは呻いた。 「その理屈でいくと、灰田さんも無事じゃすまないってことでしょ?なんで笑ってられるのさ」 「あら、わたしだけは見逃して貰えるわよ」 「その自信どっから来るの」 「だって、わたしはずっとニコさんの話し相手になっていたのよ?封印されて、誰ともお喋りできない寂しい子にずっと寄り添ってあげていたの。わたしの声が、ニコさんの唯一の慰めになっていたはず。なら、友達のわたしだけは殺されないわ。当然の理屈でしょう?」 「はあ……」  なんというかもう、“そうですか”以外の感想が出てこない。
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