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そのお喋りとやらが妄想でないことを祈るよ――と心の中で呟くゆいなである。
――まあ、話自体の筋は通ってるんだけど。
確かに、何かの呪いか祟りとしか思えないような死に方をしている人がいるのは事実だ。
しかしだからといって、この学校に封印されたニコさんとやらが本当に存在する、と確定するには弱いだろう。仮にあの男性の死体がオカルトによるものだとしても、この学校のニコさんの仕業であると確定できるわけではないのだから。
「……人はみんな、死にたくないもんだよ」
とりあえず。これだけは言っておかなければいけない。
「どうせもうすぐ呪われて死ぬ、なんて言われて怖くない人がいると思う?灰田さんが何を信じても自由だし、私も全部疑うわけじゃないけど……みんなが死ぬと思ってるなら尚更、それをわざわざ伝えて怖がらせる必要ないよ」
「あら、そう?知っていなければ、未来は選択できないと思うけど」
「どうせみんな死んじゃう、と思ってるのに選択もくそもないと思うんだけど?……とにかく、怖がってるし茶川さんたちの前でそういう話はやめよう、ね?」
「…………」
かなり言葉は選んだつもりだったが、美冬は随分不満そうだった。間違ったことなんて何一つ言ってないのに、という顔である。
「あんたまだ何か言うつもりなん?ええ加減に……!」
沈黙に耐えかねて沙穂が口を開いた、その時だった。
「皆さん、いつまで騒いでるんですか!」
がらがらがらがら、と教室のスライドドアが開いて、先生が室内に入ってきた。自分達の担任、山吹想子先生だ。四十代半ば、長い髪を一つ結びにした上品な女性教師は、自分達をぐるりと見渡して言う。
「外まで聞こえるくらいの声でしたよ。ホームルーム始めますから席についてください。……来ている生徒は、これだけですか」
「そうみたいです」
「ああやっぱり。……困ったわね。いえ、雪で来られないのは仕方ないけれど……」
先生は教壇に立ち、出席簿を開いた。
「とりあえず、出席を取ります。皆さん、席に座って!」
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