<2・怪談。>

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<2・怪談。>

 怪談や都市伝説は大好物だ。思わずゆいなは正座していた。 「素晴らしい。話すがよい、はよ、はよ!」 「ホラーと聴いた途端元気になっとる……ほんまに単純やな自分」 「やかましいわい」  そんなゆいなを、呆れたように見る沙穂。つんつんと後頭部をつっつかれながらふんっと鼻を鳴らす。  好きなものには興味津々。人間として、当たり前のことではあるまいか。 「まったくもう」  そんなゆいなに渋い顔をしつつ、亞音は話し始めた。 「俺達が通っている中学校が、結構古い学校だっていうのはゆいなたちも知っていると思う。戦後わりとすぐにできた学校だとかなんとか……正確なことは俺も覚えていないが。とにかく、そんなうちの学校で、三十年とかそれくらい前に酷いいじめがあったらしい」 「あー、今も昔もいじめって変わらなく存在するよね。やってることは普通に犯罪じゃんって思うんだけど。ノートをトイレに落として汚損させるのは器物損壊だし、机に落書きするのも同じくだよね?」 「せやな。殴ったら傷害罪や。まあ、学校側はそういう騒ぎを隠蔽したがりそうなもんやけど」 「だな。でもって昔はSNSもないし、当然子供達もスマホなんか持ってないものだから、証拠を撮影してどうこうってのも難しかったんだろう」  そういう風に言われると、なんだか変なかんじである。  昔の子供は、スマホどころかガラケーも持っていなかった。事実としては知っていても、あまり実感がわくところではない。ポケベルなんて、昔の漫画で登場しなければ存在さえ知らなかったところだ。  そういうネットワークがなかったころのいじめは、SNSいじめやLINEいじめなんてものは存在しなかったことだろう。今のいじめは陰湿で裏に隠れることが多いが、昔のいじめはもっと派手で乱暴だったと聞いたことがある。  結論。どっちもクソには間違いない。 「私だったらいじめっ子をぶん殴って終わらせるのに」  思わずぼやくと、沙穂と亞音が同時にしょっぱい顔をした。 「その正義感はええけど、ゆいなはもうちょい手加減せなあかんで?もううちら十四歳過ぎてんねん。人殺したら殺人罪適用されるんやて」 「待って?ねえ待って?私は素手で人を殴ることを想定していたんですが?何故流れるように殺しかねないなんてことになってるので?」 「ゆいなの馬鹿力ならやりかねん」 「右に同じ」 「あんたら私をゴリラか何かだと思ってませんこと!?」 「ゴリラじゃなくてゴジラだと思っている」 「ちょっとお!?」  お前らなあ、とゆいなは鼻息荒く叫ぶ。  確かに自分は昔から体力馬鹿で怪力馬鹿だと言われるが。小学校の時、力自慢の男子五人と綱引きをして、一人で圧勝したなんてことも確かにあったといえばあったが! 「まあそれはさておき」  しっし、と手で蠅でも振り払うような動作をしながら言う亞音。
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