<2・怪談。>

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「どういういじめだったかは流石に噂だからよくわからない。でも、最終的には死人が複数出たらしい。学校側も隠蔽しようとしたけど、まあ何人も自殺したような状況で隠しきるのは無理というもの。最終的には露見して、学校側が謝罪する事態になった。ただ」 「ただ?」 「いじめっ子は、大した罰にも問われなかったそうだ。十三歳以下だったからじゃないかと言われている。人を複数人死なせるほどのことをしたのに、保護者たちには実名も公表されることはなかった。何食わぬ顔で転校して、さっさと新天地で普通に生活を続けたという」 「ありそう……」  げえ、とゆいなは舌を出す。  確かに、子供達には未来があるだろう。更生させるためには、過剰な罰を与えるべきではないという考え方もまあわからないわけではない。だが。  実際に人が死んでいるのであれば、実質それは殺人と同義だ。殺人罪ならば、加害者は普通刑務所に行く。場合によっては極刑になることもある。それなのに、年齢がどうの、意図的ではなかったのどうの、それだけで無罪放免というのはあまりにもやりすぎではなかろうか。  むしろ、本人達がちゃんと罪を自覚することもできないような気がする。むしろ、反省して二度とやらないと誓わせるようにすることが大人の役目ではなかろうか。  結局罪悪感を覚えることもなく、同じことを繰り返すようでは、更生もへったくれもないというのに。 「そういう結末だったからだろう。この事件は、学校側が謝罪して、いじめっ子が転校して、それで終わりとはならなかった」  天井を仰ぐ亞音。 「そのいじめがあったクラスの生徒の中に、学校側と、いじめっ子の対応を不満に思った者がいた。その子……女子生徒だったんだけれど、彼女は死んでしまった生徒と仲良しだったらしい。彼女は復讐を誓った。虐めっ子と、この学校に必ず報いを受けさせてやらなければいけないと思ったわけだ。そして、学校で禁断の儀式を試してしまったという」 「き、禁断の儀式?」 「そう。その名も、“ニコさんの儀式”。ニコさん、というのが死んだ生徒の名前か、はたまた儀式をやった少女の名前かはわからない。確かなことは、彼女はその儀式で不可解な死を遂げたということ」  彼はノートを開くと、白紙のページにシャープペンを走らせた。魔法陣らしき星形の模様の上に、棒人間を横たわらせている。 「彼女は深夜、学校に忍び込んで儀式をやったという。いじめがあった自分達のクラスの教室の机をどけて空きスペースを作ると、床に動物の血を使った魔法陣を描いていた。そして、その上にこう、横たわった姿で発見されたんだが」  とんとん、とペン先で棒人間を叩く亞音。
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