<2・怪談。>

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「翌朝見つかった彼女の死に方は、あまりにも奇妙だった。まず教室の鍵が全部閉まっている。当たり前だが、教室の鍵は必ず見回りの先生や警備員が閉めることになっているだろう?この部屋もそうだった。だからそもそも、彼女が深夜にこの教室に入れたのが不自然。なんなら、深夜ともなると先生達も帰ってしまっているから、校舎そのものの鍵が施錠されている」 「確かに」 「侵入経路も不可解ならば、彼女の死因も不可解。彼女は……内臓をごっそり失った状態で発見された。正確には」  彼は自分の鳩尾のあたりを指さした。 「こう、鳩尾からしたの内臓が、ごっそりなくなっていたんだ。胃袋から下が全部、と思って貰えばいい。腸も、肝臓も、すい臓も、腎臓も、子宮も、卵巣も、膀胱も……それら全てがきれいさっぱり。死体は不自然に腹がへこみ、彼女は口から血を流して死亡していたという」 「うええ?」  よくわからないが気持ち悪い死に方であったのは間違いないらしい。ゆいなは首をかしげて言う。 「その言い方からして……お腹切られて、内臓が持ち去られてたわけではないっぽい?」 「ああ。外傷が見られなかった。不自然に、胃から下の臓器だけがごっそりと消失していたんだ。口と、あと下半身の穴という穴から出血していたらしいが……それらはすべて、内臓が損傷したことによる出血だな。しかも」 「しかも?」 「腹膜に傷はなかった。本当に、筋肉と膜が包んでいる内臓だけが失われていたんだ。それも、生活反応があったというから、完全に生きた状態でな」  明らかにオカルトである。だからこそ、現実味もない。ちょっとだけ面白そう、と不謹慎にも思ってしまったゆいなである。 「……で?彼女が死んだのが、終わりではないんでしょ?」  好奇心から、身を乗り出して尋ねた。 「彼女は己の内臓と引き換えに、やばい神様とか悪霊とか妖怪とか、そのへんを召喚したっぽいよね?でもって目的は一つしかない。虐めっこと、この学校への復讐だ。そうでしょ?」 「その通り。……暫くして、遠方で暮らしていたいじめっ子の少女がまったく同じ死に方をした。鍵がかかった自宅の部屋の中で、内臓をごっそり奪われて死んでいるのが発見されたんだ」 「わお」  密室。人間ではどうあがいても不可能な死に方。  100%、人外の仕業ではないか。 「彼女だけじゃない。学校の関係者も、次々と同じ死に方をした。いじめを傍観していたクラスメートも、担任の教師も、副担任の教師も、校長も。……さすがにこれは放置したらまずい呪いだと気づいたんだろうな。その当時の教頭が、死に物狂いで霊能者を探したらしい。その霊能者が、最終的にはこの学校に、彼女の怨念を封じ込めることに成功したという。それで、被害はどうにか収まったんだそうな」 「なんかオチがチープだなあ。寺生まれのTさんじゃん」
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