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里中くんは、人が怖い。
自分も人だけど、人が、怖かった。
対人恐怖症だ。
子どもの頃から、人と話すのが、苦手だった。
それは、高校生になっても変わらなかった。
だから、いつも、一人で教室の隅っこで目立たないようにしていた。
だって、人に話し掛けられたら、なんて答えたらいいか分からなかったし、もし、話しても、つまんない人間だと思われるのが、怖かった。
実際、里中くんは、自分のことを、すごくつまらない人間だと思って生きてきた。
これといって、特技もないし、冗談の一つも言えない。
もしも、冗談を言ったとして、シラケたらどうしていいか分からない。
シラケさせるくらいなら、黙って、教室の隅で、気配を消していた方が、何十倍もましだ、と里中くんは、思っていた。
しかし、そんな里中くんだったが、奇跡的に、緊張せずに話せる人間がいた。
それは、幼馴染みの広田さんだった。
幼馴染みと言っても、ただ家が近くて、同い年なだけだったが、子どもの頃から、明るくおおらかな広田さんだけが、里中くんに、気さくに話し掛けてくれた。
里中くんにとって、広田さんは、女神さまに等しかった。
広田さんは、ちょっと太っていて、決して美人ではなかったが、里中くんにとって、そんなことはどうでも良かった。
広田さんだけが、里中くんの味方だったのだ。
しかし、そんなある日。
重大事件が起こった。
なんと、同じクラスで、生徒会長の速水くんが、広田さんに告ったのだ。
速水くんは、里中くんとは正反対の誰とでもすぐに仲良くなる人気者で、イケメンで、頭も良かった。
里中くんは、焦った。
途轍もなく、世界が真っ暗になった気がした。
ど、どうしよう?!
里中くんは、人生一大事のピーンチだった。
どうする?!
里中くん!
(下)へ、つづく、、、
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