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庭の梅の木はつぼみが膨らみはじめた。しかし風は冷たく、春はまだ遠い。
しっとりと冷たい、真夜中の寝室の冷気が首筋をなでる。眠りとろけた状態で、掛布団を顔まで被った。温かな布団のなかで身体を丸める。
再び眠りに落ちるまで時間はかからないと思われた。
ふんふん、と鼻息が聞こえた。
枕元にやってきた飼い猫が、布団に入りたいな、どうしようかな、とうろうろしているようだった。
右に行ったり左に行ったりして、ひたすら頭のまわりで鼻を鳴らしている。日中は猫の鼻息なんて気になったこともないのに、家中が寝静まった真夜中にやられると気になって仕方がない。
鼻息が額にあたってこそばゆい。
こうやれば人間が自分のために動いてくれるとわかってやっているのかとも思う。
一匹飼いで、家族中の愛情を惜しみなくうけて育った究極体なので、たしかにそう思っているような節はある。そして実際、かわいいもふもふのために人間は動いてしまうのだ。
目を閉じたまま、掛布団を持ち上げる。
猫はのそのそとした足取りで入って来る。部屋が冷たいせいか猫の身体は冷たかった。せっかく温まった布団のなかを冷ややかな塊が移動していく。
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