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未明から、永遠の夜明け
その数時間後、栞は2つ並んでいる布団の、片方の上にへたりこんでいた。
朝日が射したら、すぐに健二におはよう!を言おうと、ゆうべから決めていた。
だが、だんだんと明るくなっていく部屋のなかで、栞は茫然としているだけだった。
いや? 泣いていた。
しゃくりあげもせず、両目からボロボロと涙を落としていた。
「……これからは、二人だねって……。
なにをするにも二人だねって……言ったじゃない…………」
健二は、反応しない。
栞の生気のない目線は、隣の布団の、ひときわ深いシワのあたりに落ちていた。
踏んではいけないものを、踏んでしまっていた。
「……踏んじゃった、ねこ踏んじゃった。
踏んづけちゃったら死んじゃった……。
ふ………ふふふ……ふ!
ーー 健二! 笑ってよ!」
栞は健二に突っ伏した。
しがみつくように抱きしめた。
サイレンの音が近づいてきていた。
栞は健二の首に両腕で抱きついて、泣き続けた。
ゆうべ二人で書いた婚姻届が、部屋の角に寄せたテーブルの上で、朝日の陰になっていた。
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