別々の部屋

3/4
前へ
/129ページ
次へ
「ごめんなさい、藤孝様。  お(いか)りにならないで」  藤孝様に(たしな)められて、自分でも見せたいのか、見せたくないのか、矛盾した行動が、すごく恥ずかしくなる。  私はいつもこうだ。  深く考える前に、とりあえず身体が動いてしまう。   「ワタクシ、自分のが、どのようになっているか、見たことがなかったんですの。  だから、さっき鏡で見てみましたら……すっごくヘンなんですもの。  藤孝様に……嫌われたくないのです」  私は、藤孝様の胸の中で、泣きたい気持ちになりながら訴えた。 「はぁー」  頭の上から、深いため息が聞こえる。    やはり、嫌われてしまったのかしら?    だって昨日の夜、帝国ホテルの大きな寝台(※ベッド)で、藤孝様は私のヘンなところに、長い指を入れてじっくり観察してらしたもの……。  アソコに指が入ると、すごく気持ちがよくて、おかしな気分になってしまったから、余計、私がヘンだと思われたんだわ。きっと。 「嫌いになるわけ、ないじゃないですか」  涙目になった私が見上げると、藤孝様は優しく微笑んだ。 「櫻子さんは、すべてが美しくて可愛い、僕のお嫁さんなんだから」 「藤孝様……」  私は、固くて広い藤孝様の胸の中に、しっかりと身をゆだねる。  あぁ、やっぱり藤孝様が大好きだわ。  あんな奇怪な部分も、受け入れてくださるなんて。  だけど、なるべくもう、あの部分は見せたくない……。
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!

184人が本棚に入れています
本棚に追加