赤井の匂い

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赤井の匂い

赤井が帰った後の部屋にはパンとコーヒーと毛布。 まだ温かいコーヒーを飲みながら、ひざを抱えて、帰り際の赤井の眼を思い出していた。 あのこは怖い。 無邪気すぎて。 予定なんてないのに、そうでも言わないと追い出す理由がないから。 ごろんと横に転がり、投げ出した手の先に、赤井が使っていた毛布があたる。 わたしはそれを手繰り寄せ、頭から足の先まで、全身を毛布ですっぽりと包む。 その中は赤井の匂いが充満していた。 暗い部屋で見た赤井のシルエットが浮かぶ。 大きく息を吸い込むと、内臓がジンジンと熱をもって震える。 それから何度も深呼吸し、身体いっぱいにそれを満たす。 ふつふつと奥が泡立つのがわかる。 そしてわたしの右手は熱を持った太腿の重なりに吸い込まれた。 重なりの奥にある熱く湿った深い溝に指を滑らせる。 (わず)かに突き出た小さな膨らみをみつけてそれを丁寧にねりあげると、ぐぐぐ、と隠れていた芯が自我を持って這い出してくる。 動かすごとに体温があがり息がとぎれる。 赤井の匂いに包まれながらわたしは、背徳感にさらに沸き立ち、毛布の中の湿度はぐんぐんと上昇する。 指先が溺れそうだ。 わたしの中心は水位を増す。 間もなくそこはぬるりと大きく口を開け、指を根元まで飲みこんだ。 自分の意志では止められなくなった動きを身体中で受け、小刻みに震えながら小さな波を何度も(かわ)す。 蒸し暑い。 いくつかの波を越え毛布の中の湿度が上がりきったとき、わたしの身体は大きくうねり、緊張する。 限界まで反り返った腰の奥底は、沸騰し、わたしのすべてを噴き出してしまった。 赤井と自分の匂いが混ざる蒸し暑い毛布の中でわたしは、荒い呼吸のまま、遠くに響く外界の音をぼんやりと聞いていた。 まだジンジンと奥の方が痺れて、微かに脈打っているようだった。 そんな奥まで、自分じゃ届かないんだよ。
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