episode.3

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episode.3

半袖の人が増えてきた6月後半、テストが近いから僕は図書室で勉強していた。 勉強はあまり好きじゃないけれど、図書室の独特の匂いに囲まれながら勉強するのは嫌いじゃない。図書室には僕ぐらいしか利用者がいなかった。 窓際で日光に当たっているとぽかぽかして眠くなってきた。なんとか意識を保とうと窓の外に目をやると、体育館の横でクラスの男子たちがホースの水を掛け合って遊んでいた。 その中にびしょ濡れの矢田を見つける。いかにも子どもっぽくて、男の子の遊びって感じがして馬鹿みたいと思った。だけど太陽に負けないくらい明るく笑う姿は眩しいとも思った。目を逸らしたくなる程に。 じっと眺めていると矢田がこっちを向く。口をパクパクさせているけど、何言ってるのかはわからない。 ま、ど……開けて?窓開けてってことか。 僕はべーっと舌を出して拒否する。誰が開けてやるもんか。 さて、勉強に戻ろう。あんな風に遊んでいてテストの点悪くても知ったこっちゃない。 数分後、僕は机に突っ伏して半分意識が飛んでいた。でも僕は悪くない。眠気を誘う日光のせいだから。 「あれ、佐賀寝てるの?」 どこかで聞いたことのある声がする。誰だっけ。 「勉強してたのか。……あ、ここ計算間違えてる」 うるさい。数学苦手だから仕方ないだろ。 頭を誰かが撫でている気がした。けれど、もう眠い……。そして僕は完全に爆睡したのだった。 「──かわいいな」 さっきの声やっぱり知っている人の声だった気がする、と思ったけれど、僕はもう意識がなかったから誰かは分からずじまいだ。
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