『需要と供給』

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昼休み 昼飯を朝コンビニで買った 昆布のおにぎり1個と おーいお茶1本で済ませた俺は いつもの様にひとり自分の席で テキトーにタイトル買いした ブルーバックスを読んでいた 「何か面白い事ない?」 と野球部の杉山が俺のところに来た 静と動 まったく性質の違う俺と杉山は 不思議と気が合った 俺は「...うーん...こんなのとか?」 杉山を正面に座らせ 両手の人差し指をピンと立てた 「はい、指先を見て...」 「集中して...」 と言いながら 杉山の両目にゆっくりと 指先を近づけていく 指先が目に入りそうになっても まばたきひとつしない杉山に 驚きながらも 「まぶたを閉じて...」とささやく 杉山はいたって素直にまぶたを閉じた 刹那 俺は左手をピースにして両まぶたを押さえ 右手で頭を思い切り叩く バシッ!! 「誰だよっ!」 「痛ってぇなぁ!」 と言いながら振り返る杉山 「......???」 だが誰もいない 俺は 「これが『アダム・スミスの見えざる手』だ」 とにこやかに言い 杉山にタネを明かしてやった 「ほーん...」 「ありがとな」 杉山はスクっと立ち上がり 教室を出て行った 次なる生贄を探しに行くようだ
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