冷たくも温かい思ひ出

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 その後、私達は極めて順調に帰宅することが出来た。帰宅してすぐに点けたテレビでは大雪のニュースが流れていた。都心部が雪で大混乱と言うニュースに始まり、日本海側を襲った豪雪でメートル単位の雪が積もったと言う話題に繋がり、最後は私達が遭遇した立往生の話題で締められていた。 私達が巻き込まれた立往生であるが、後に◯◯豪雪と名付けられる程の日本海側の豪雪に巻き込まれたものであった。  母は帰宅後、落ち着くなり祖母に帰宅の旨を電話で伝えていた。祖母も私達家族が立往生に巻き込まれたと聞いて心配していたようで、帰宅報告を受けて安堵していた。 祖母はその報告の電話を切る前にこう言っていた。 「うちの爺さんは『雪の申し子』だったからねぇ。そんな人が煙になって天に昇ったからこんなに雪が多く降ったのかもしれないねぇ」と。 私は雪が降る度に、「祖父のこと」と「雪の中で立往生に巻き込まれたこと」を思い出すだろう。 そして、私の心はその度に温かくなるのである。冷たいながらに温かさもあるのだから……                             おわり
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