天音の受験結果

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天音の受験結果

さて、天音の受験結果はというと。結果は振るわなかった。振るわなかったが、想定通り、事前の模試の判定通りの結果が出た。十学部受けて、八学部落ちた。仕方ない。追い込みはがんばったが、時間が足りなかった。W大学には遠く及ばなかった。 その当時のことを思い出すと、天音はとても苦しい気持ちになる。一校一校、発表があるたびに落ちてゆくのは、もちろんつらいことなのだが、天音の悩みはそこではなかった。原因は母なのだ。母が重たすぎるのだ。 天音の母親にとって、天音の受験はひとごとなんかでは全然なかった。母にとっては、まるっきり我がことなのだ。母はまるで、ふたり分の人生を生きるつもりのような、自分の人生だけでは飽き足らず、天音の人生まで乗っ取ろうとするかのような調子なのだ。 だから天音が学校に行っている間に合否通知が届くと、母はなんのためらいもなく、開封してしまう。帰宅して、玄関を開ける母の顔を見て、不合格だったことを知ることになる。大概は不合格だったから、何度となく母の暗く沈んだ顔を見るはめになる。 思えばずううううっと昔から、母は天音の人生を支配しコントロールしようとするひとだったのだが、天音もそろそろおとなになりかけていた。 妹は、お姉ちゃんの反抗期はすさまじかった、と後々、繰り返し非難したが、重たすぎるものを背負っているのだ。当然といえば当然だった。同じ母をもつ姉妹とはいっても、母の覆いかぶさり方のレベルは、ぜんぜん違ったのだ。天音にしかわからないことだ。
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