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SNSの呟きを更新させ続ける。それだけの事。指は黄金長方形の比率で前後上下に動く。
そんな時だった。
月が爆ぜた。
月が爆ぜたのだ。黄金色の破片が一つずつ剥がれていく様に崩れる。
悠然と光っていたはずの月は、活性を失い、銀河系の暗闇に消えていった。
俺が頭上に掲げているのはスマホだった。白い円の中に四角い赤。気が付くと俺は、一心不乱に、その壮大な遠景をレンズに焼き付けていた。
そして、SNSに投稿するまでがセットである。
投稿してから十分は確実に経ったが、未だに何のリアクションもない。インプレッション数は自分のタイムラインに表示された数であろう"1"で、何度更新しても現実を突き付けてくるばかりである。
午後九時、冬至を過ぎたのに、日はかなり沈んでいる。
外へ出よう。外に出て、恥ずかし気もなく、「さっき、月が爆ぜましたよね?」、と聞き回ろう。
俺は居ても立っても居られない心操を抑えきれなかった。
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