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俺がそれを観測したのは水曜日の夜である。
俺はこれと云った趣味も特技ない人間だった。いや、観測した後も変わらず平々凡々な――それ以下かもしれないが――生活をしている。
しかし、想い出が出来たのだ。思い出なんかとは違う。毎日のように友人と日が暮れるまで遊び、その言葉を覚えた小学二年生の某日から、昨日の鬼ごっこは思い出だった、一昨日のドッヂも思い出だった。そう嬉しそうに話した、あれらの比にはならない。「あの日起きた事はこれからの人生で、一刹那とも忘れる事はない」、と恥ずかしさなく語れるだろう。
当夜の彼女にもそう言えるだろうか。言える、言えるからここに備忘録を残しておく。
さて、最初から指示語だらけの語り口で退屈に感じたと思う。水曜日の夜、何が起こったのかゆっくり話そう。
情報量と秘密が多いのでゆっくりと話すしかないのだ。だが、それらがこの記憶を想い出たらしめていると云う事が伝わればいいな、と思う。
あの日、月は爆ぜた。
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