対決

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 何とか別の術も使いたいところだけれど、その隙が見つからない。  昔、似たような攻撃をしてくる妖に出会った時には颯懍は、妖の正面を剣で相手しながら背後に火を放って倒していたっけ。  そこまでの技術をまだ身に付けられていないことが悔しい。 「ほら、どうしたんだ女道士よ。お前を喰ったらそこそこに陰の気が手に入りそうだ」  こいつ……! やっぱり妖には女ってすぐバレちゃうのか。焼けっぱちになって思いっきり剣を振り風の力を付与してみたが、あんまり意味が無かった。相手の風とぶつかり合って物凄い暴風が一瞬、吹き荒れた。  やばっ!! 周りの人は?!  血の気がサッと引いて周りの様子をチラリと見たが問題はなかったようで、颯懍が涼しい顔をして近くの屋根の上から見ている。 「気にせずやれ」 「はい」 「お前の師匠は薄情だな。あんな所で高みの見物か。かっ、かっ、かっ」  颯懍は基本的に私が死にそうにならない限り手を出さない。これまでそうやって修行を積んできたし、それが颯懍のやり方だと知っている。私が最大限に成長出来るように考えてのことだって、ちゃんと分かってる。  もう一度剣を握りなおして妖へと向き直ると僅かに顔に、虎のような縞模様が浮かび上がっていた。 「笑っているけどあなた、精気が足りなくなってきたんじゃない? 縞模様が出てきてるよ、虎の妖さん」 「――っ! うるさい! お前を殺して喰えばなんの問題も無いからな」  人型を保てなくなってきたという事は、あともう少し!
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