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さっきと同じ様に斬りかかりに行くと見せかけて、思いっきり剣を振り上げた。
「馬鹿の一つ覚えか?」
余裕の表情で手を振り上げようとした虎男の顔が、異常に気が付いて歪んだ。
「なっ……!!」
「もらったあぁぁ!!」
氷漬けにして動きを封じた虎男は動けない。
こいつが例え火の仙術を使って氷を溶かしたとしても、その前に斬ってやる!
間近に迫る虎男の顔。
それなのに――。
どういう訳か、私の視界は上下が逆になった。
「えっ、なに?! ひゃああぁぁっ!!」
足首を近くに生える柳の木の根で縛り上げられ、逆さ吊りにされてしまった。
その間に氷を溶かし、身動き出来るようになった虎男と一気に形成が逆転。今度は私が顔を歪める番になった。
「こんな根っこ!」
たたき斬ってやる! と思っても、剣はさっき吊り上げられた衝撃で地面に落ちたまんまだ。
それなら敵と同じ様に風の刃で、と風を巻き起こしてみても、木属性の仙術を使う能力は相手の方が上。見事に阻止された。
それなら燃やしてやる!! と火をおこそうとしたが、その前に濃霧が立ち込めた。木の根が湿り火がつかない。
完全に相手の方が精気を縒り合わせる速度が早い。
違う属性の術を出すには、同じ属性の術を出すよりも時間がかかる。特に陰から陽、陽から陰と言ったように相対する属性だと尚更。
私が違う属性の技を出すのには、1拍どころか2、3拍はかかってしまう。
「さてさて、美味しい夕餉を頂くとするか」
「きゃあああああああっ!!」
ぶうーんっ、と根っこが大きく振りかぶり、そのままの勢いで思いっきり地面に叩き付けられる!
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