練習

2/10
前へ
/175ページ
次へ
 何よそれ。人が気になる様な言い方をしておいて酷い。  服をしまい終わって、今度は寝具を整える。  初めて颯懍の部屋に入った時は、絹糸で出来た寝具なんてこの世に存在するんだと度肝を抜かれた。ツルツル、サラサラの触り心地に、思わず頬ずりしたくなる。  硬派な颯懍の事だから結婚したらきっと、凄くお嫁さんを大事にするんだろうな。  そう思うとちょっと羨ましい。  なんてったって自分は、ただの偽婚約者に過ぎない。  いつかこの寝台で妻となった仙女と……。  って、何考えてんの!!  自分のとんでもない妄想にびっくりして頬を引っぱたいた。 「何してるんだ?!」 「い、いえ。ほら、虫がほっぺたに止まったような気がして。あはは……」 「虫も女も、1匹でも入らないように結界を張ってるんだ。そんな訳ないだろ」  颯懍は夜這いをされてからと言うもの、自分の部屋に結界を張ったそうだ。もちろん私が出入り出来ないのは困るので、私は術には感知されない。  信頼されてるんだ!  とか思ってたけど、それってよくよく考えてみれば、若干残念な人では?  つまるところ私、女として見られてないって事で。 「師匠って女性が苦手なんですよね?」 「はあ? 何だ急に」 「私、女なのに何で大丈夫なのかと思って」  結構悲しい質問だ。答えによっては立ち直れないかもしれない。
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加