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何よそれ。人が気になる様な言い方をしておいて酷い。
服をしまい終わって、今度は寝具を整える。
初めて颯懍の部屋に入った時は、絹糸で出来た寝具なんてこの世に存在するんだと度肝を抜かれた。ツルツル、サラサラの触り心地に、思わず頬ずりしたくなる。
硬派な颯懍の事だから結婚したらきっと、凄くお嫁さんを大事にするんだろうな。
そう思うとちょっと羨ましい。
なんてったって自分は、ただの偽婚約者に過ぎない。
いつかこの寝台で妻となった仙女と……。
って、何考えてんの!!
自分のとんでもない妄想にびっくりして頬を引っぱたいた。
「何してるんだ?!」
「い、いえ。ほら、虫がほっぺたに止まったような気がして。あはは……」
「虫も女も、1匹でも入らないように結界を張ってるんだ。そんな訳ないだろ」
颯懍は夜這いをされてからと言うもの、自分の部屋に結界を張ったそうだ。もちろん私が出入り出来ないのは困るので、私は術には感知されない。
信頼されてるんだ!
とか思ってたけど、それってよくよく考えてみれば、若干残念な人では?
つまるところ私、女として見られてないって事で。
「師匠って女性が苦手なんですよね?」
「はあ? 何だ急に」
「私、女なのに何で大丈夫なのかと思って」
結構悲しい質問だ。答えによっては立ち直れないかもしれない。
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