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「後悔しないな?」
「これまでの人生で、後悔なんてした事は一度もありません。なので今回も後悔しないって自信があります」
胸を張って言い切る私に、颯懍が吹き出して笑った。
「ふはっ、その根拠の無い自信が羨ましいな。それならお互いに練習するとしよう。師弟関係抜きにだ。だから嫌だと思ったりやめたくなった時には、遠慮なく申し出るように」
「分かりました」
「それならそうだな。いきなりって言うのもなんだし、接吻からしてみるか」
「はい! どんと来いです」
「お主は雰囲気とか情調と言うものを分かってないな……。まあいい。嫌だったら右手を上げろ」
「了解です」
寝台に座らされて、隣には颯懍が座った。
緊張する……。
緊張するけど、ただのキスだし。大丈夫! なハズ。
いつになく真面目な顔をした颯懍の顔が近づいてきた。
バクバクと心臓が激しく鼓動を打つ音が耳にうるさい。
少しだけひんやりとした唇が触れた。
ああ、颯懍もものすごい緊張してるんだな。と思うと少し気が抜ける。
部屋に来る前にきっと白茶を飲んでいたのだろう。香草と花を混ぜ合わせたような香りがして、次には甘い優しい味がした。
えっ……? 味??
私の唇を割って入ってきた味に、脳が大混乱しはじめた。
ちょっと待って。
キスってあれだよね。唇と唇を重ねて「チュッ」
ってするやつ。小さな子供と母親が、好き好きチュッてするやつの大人同士バージョンだよね??
脳内が混乱を極めてもはや思考停止に陥る中、頭の後ろと腰には颯懍の手があてがわれて、互いの口が余計に深く入り込む。
口の中をなぞられ重なり合う唇の向きが変わる度に、聞いたこともないような湿っぽい音が鳴った。
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