練習

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「はっ、そんな事を言ってるけどどうだかね。市井の者もそんな様な言い訳を良くしていたよ。盗るつもりじゃなかったとか、そんなつもりじゃなかったとか」 「こら、俊豪! 疑ってかかるのは良くないわ。それにこんなに丁寧に謝ってくれているじゃない」 「可馨様は人が良すぎるのです」 「明明といったかしら。御免なさいね。少しもの言いがキツいのよ」  美声で美人な上にお優しいとか最高です。  でもきちんとケジメは付けないといけない。 「いいえ。私がいけない事をしたのが悪いのですから疑うのも当然です。どうぞ何なりと罰をお与え下さい」  もう一度深く頭を下げると、「ほらね」と可馨が俊豪を窘めた。 「悪い子では無いわ。誰でも間違うものよ。罰はいいからお行きなさい」 「そうは参りません。鞭打ちでもなんでも甘んじてお受けします」 「鞭打ちなんてしないわ。でも……そうね。貴女の気がすまないと言うのならこうしましょう――」 「――と言う訳でして、ひと月ほど可馨様の御屋敷へお手伝いをしに通う事になりました」 「可馨……」  可馨からの文がしたためられた木簡を手にしている颯懔が、ポツリと呟いた。  どんな顔をして会おうとか思っていた自分が馬鹿だった。こんな失敗をおかして帰ってくるなんて、面目ない。 「可馨様とは古くからの御知り合いなのですか?」 「あ? ……ああ、まあな」 「すっごく綺麗な御方ですよね! なんだか周りがふわふわ〜っと桃色に染まって。最初に見た時なんて、花の精がやって来たのかと思いましたよ。おまけにお優しいし、天から二物も三物も与えられた人と言うのは、ああ言う方を言うんですね……って、師匠。聞いてますか?」
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