師匠との関係

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「颯懍のところは男ばかりなのでしょう? こんなに可愛らしい女の子が一人で大丈夫なの? 困ったことがあったらなんでも言ってね」 「ありがとうございます」 「お前の師匠は相当な女嫌いって聞いたぞ。屋敷に女は出禁にしてたり、会ったとしてもそっけないって話だ。仕舞いには俗世に逃げだしたとか、どんだけなんだよ」 「だから女の弟子を取ったって聞いたときには皆んな驚いたと同時に大喜びよ。女嫌いが解消されれば、諦めていた『嫁の座』が狙えるって」  『嫁』と聞いて、喉に包子が詰まりそうになった。可馨に渡されたお茶を飲んで流し込む。  だから老君の御屋敷で会った仙女達がチャンスが云々と言っていたのか。  私が嫁候補になっているのは老君以外には知られていない。  それは颯懔が老君に、正式に結婚するまでは障りがあるので他言無用にして欲しいとお願いしたから。「ほかの仙女達からのやっかみがあると面倒じゃからな」とか言って、老君も了承してくれた。  実際には婚約破棄後の私へのダメージを、最小限にする為でもある。 「ははっ、あんたは女として見られてないって事だな。俺もあんたみたいな(やかま)しい奴を嫁にするとかやだし」 「俊豪くーん、ちょっと黙っててくれる」  どうせ元気なだけが取り柄ですよ。  いちいち人から言われなくたって分かってるよ。 「ところで可馨様。明明の師匠と言えば……薬草の栽培方法を明明に教えてしまっていいのですか。颯懔様がいくら遷人とは言え、可馨様が折角培ってきた薬草栽培技術を他の者に教えてしまうのはどうかと思うのですが」  俊豪が言うことは最もだ。野菜を作るのだって技術がいるように、薬草だって適当に種を撒けばいいってものでは無いだろう。  余所者にその技術を盗まれてしまっては、商売上がったりだ。
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