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天宇に言われて、お風呂場へと向かった。目の粗い布で身体を擦って汚れを落としていくと、段々冷静になってきた。
さっきはなんであんな大騒ぎしちゃったんだろ。颯懔の裸ならこれまで何度も見てきたはずなのに。
頭から湯を被って正気を取り戻す。
颯懔は師匠! 照れる相手じゃないでしょ!!
風呂から上がって身支度を整え終わった後、颯懔の部屋へと足を運んだ。変質者でも見たかのように叫んでしまったので謝らないと。
「師匠、先程は失礼致しました」
「いや、俺も悪かった。その……今後は気を付ける」
「は、はい」
「…………」
「…………」
妙な沈黙を振り払うように、颯懔がわざとらしく咳払いをした。
「あー、それで、初仕事はどうだった」
「俊豪に手取り足取り教えて貰いながら、薬草畑の手入れをさせてもらいました」
「手取り足取り……?」
ピクり、と眉尻が動いた。あれ、なんか言い方変だったかな。
「えっと、正確に言うと、詳しく説明してもらいながら。ですね。俊豪本人は後ろから口出ししてばっかりだったので」
「ふーん。俊豪と言うのは確か、お主の事を捕らえた道士だったか?」
「はい。私よりも道士歴は少し長いくらいなのに、術を完全に封じられてしまいました。いくら私がポンコツだからって凄いですよねー! 近付かれたのだって全然気が付かなくて、気配の消し方も上手なんです」
「でも道士であろう?」
「そうですけど……」
颯懔は「はっ」と鼻で笑って頬杖をついた。
んん? いつもならこんな風に人を見下すような発言はしないんだけどな。今機嫌悪いのかな。話題を変えよう。
「そうだ師匠。可馨様が、師匠は昔から栽培された薬草は使わないと仰っていたのが気になって。確かにいつも採取して来るように言いますよね? どうしてですか」
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