花森課長、もっと分かりやすく恋してくれませんか?

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花森課長、もっと分かりやすく恋してくれませんか?

■  経理部の花森課長といえば「こちらは経費で落ちませんから」と領収書を突っぱねる姿が第一に浮かび、二言目には「申請書類は期日厳守でお願いします」と睨みをきかすイメージ。  こと私とは相性が悪く、この日の彼は青筋を立てて乗り込んできた。 「宮田さん、宮田香さんはいらっしゃいますか?」  ドアを開けるなり人の名前を連呼する。私はゴーグルを外し、彼に向かって手を上げた。 「はーい、宮田はここです。作業中なんで少し待ってて下さい」  事務所と工房は距離があり、どんな顔をしているか見えない。ただ返事は伝わったようで側の椅子を引いている。 「さて、と」 「いいんですか?」  作業を再開しようとすると同僚が尋ねてきた。彼の言いたい事を承知したうえ、あぁして待たせているんだって口角を上げる。 「また怒られますよ? 花森課長が直々に来たって事は相当ですし。心当たりはあるんでしょう?」 「うーん、この間、夜食でピザを頼んだんだけど経費で落とせないかなって申請したの。それと男に追い出されてホテル暮らしになったじゃん?」 「……まさかホテル代まで経費で落とそうと? どうして、そんな無茶な真似を?」 「はは、何事も当たって砕けろってね! 経費で落ちればラッキー」  機械の出力を最大にすれば周囲の声は掻き消され、私は火花散る視界に吸い込まれるよう集中した。
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