影が交わる頃に

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影が交わる頃に

 むさ苦しいほどの暑い季節。 俺はその日、親友と仲違いした。  『どうしてそんな事を言うんだ…?お前がそんな事を言うなんて…。 なあ…嘘だって言ってくれよ、(しょう)。』 飛高勇(ひだかいさむ)は俺を見て、酷く悲しげに言った。  セミの鳴き声が遠くで鳴いて響いている。 外の熱気とは対称的に、空調がよく効いた室内。  『ごめん、いくらお前の頼みでも、そこまでは聞けない。 …だから俺達はもう、これで終わりだ。』  『(しょう)…っ!』  (いさむ)の声が聞こえるのも構わずに、俺は部屋を出て、振り返らずに扉を閉めていた。 扉を閉めた俺の手は、震えていた。  (いさむ)とは保育園の頃からの幼馴染みであり、親友だった。  明るくてやんちゃで、俺とは正反対だった勇は、いつだって皆の中心にいた。 しかしその長年の友情も、今日を持って終わったのだ。
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