26人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
影が交わる頃に
むさ苦しいほどの暑い季節。
俺はその日、親友と仲違いした。
『どうしてそんな事を言うんだ…?お前がそんな事を言うなんて…。
なあ…嘘だって言ってくれよ、照。』
飛高勇は俺を見て、酷く悲しげに言った。
セミの鳴き声が遠くで鳴いて響いている。
外の熱気とは対称的に、空調がよく効いた室内。
『ごめん、いくらお前の頼みでも、そこまでは聞けない。
…だから俺達はもう、これで終わりだ。』
『照…っ!』
勇の声が聞こえるのも構わずに、俺は部屋を出て、振り返らずに扉を閉めていた。
扉を閉めた俺の手は、震えていた。
勇とは保育園の頃からの幼馴染みであり、親友だった。
明るくてやんちゃで、俺とは正反対だった勇は、いつだって皆の中心にいた。
しかしその長年の友情も、今日を持って終わったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!