鍋とビール

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ーー 「姉ちゃん! ねぇーーーーちゃん! ここで寝たら風邪ひくって!」 お腹も心も満足した私は、駆馬が片付けをしてくれている音をBGMにテーブルに突っ伏していた。 眠い。もう指一本動かせない。 キッチンから私を呼ぶ駆馬の声で、辛うじて意識を保っているが、もうベッドに行くのさえ億劫だ。 「姉ちゃん、起きて! せめて寝室で寝て!」 いつの間に片付けが終わったのか、耳元で駆馬の声が聞こえた。 「……ん」 掠れた声を出すのが精いっぱいだ。 「歯磨き! せめて歯磨きして!」 「……ん」 呻き声で返事をすると、不意に体が浮いた。 どうやら駆馬に抱き上げられているらしい。私は駆馬に連れられて洗面所へ行き、寝落ちそうになりながら歯磨きをした。 また駆馬に抱き上げられ、ベッドまで運んでもらった。 「……ぁるま……」 「ん?」 「……あんがと……。ふがい、ない、姉で……ごめん」 「不甲斐なくないよ。姉ちゃんはすごい! 今週もお疲れ様、おやすみ」 駆馬の唇が額に触れるのを感じる。 彼氏面をするなと言いたいところだが、もう喋る気力もない。 私は温かいベッドの中で夢の中に落ちた。 了
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