鍋とビール

1/7
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

鍋とビール

「さっむい……」 会社のオフィスが入ってるビルを出ると、あまりの寒さにカメのように首を竦めマフラーに顔を埋めた。 コートの下で体が小さく震える。 私は昨日の天気予報を思い出す。 昼は日向だと温かさを感じるが、夜は一気に気温が下がると言っていた。 残業で帰る時間がいつもより遅くなったせいで、寒く暗い中帰宅しなければいけない。 「せめて誰かが隣にいてくれたら少しは気が紛れるのに……」 なんて、叶いもしないことを考える。 恋人いない歴=年齢。友達もほとんどいない。そんな私の傍にいてくれる人はいない。 せいぜい帰ったら居候中の弟がいるくらい。 「帰ろ、帰ろ」 今日は金曜日だ。明日は休み。今週も私は頑張った。帰ったらビールでも飲もう。 私は自分へのご褒美を考えながら、コートのポケットに手を突っ込んで足早に駅に向かった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!