鍋とビール

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シクシクと泣くふりをしてお玉をお鍋に沈めた駆馬は、豆腐を3つも掬って自分のお皿に入れた。 「あ、ちょっと私の豆腐!」 「話聞いてくれない姉ちゃんに豆腐はあげません」 「分かった、分かった。……いい? 年の差が気になるのは学生の間だけ。大人になったらそうでもない。来年、駆馬が二十歳になったら一緒にお酒のもうよ、ね?」 「……うん。姉ちゃん大好き、豆腐あげる」 駆馬は私の器にも豆腐を2つ入れてくれた。 「ありがとう、豆腐大好き」 「俺は?」 おっと、口が滑った。 「可愛い弟だと思ってますよ」 私はテーブル越しに駆馬の頭を撫でてあげた。 機嫌取りは大事。それだけで明日の朝食がフレンチトーストになるか、ゆで卵3つになるのかが決まる。 「へへ」 こんなことで機嫌が直るのだからチョロ可愛い。 駆馬はさらに私の器に豆腐を足してくれた。ついでに野菜もたっぷり足してくれた。 私は足された野菜や豆腐を食べつつビールを堪能する。 これぞ至福。 明日は休日だし、ビールをもう一缶開けてもいいよね。今週も頑張った私へのご褒美だ。
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