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鍋とビール
「さっむい……」
会社のオフィスが入ってるビルを出ると、あまりの寒さにカメのように首を竦めマフラーに顔を埋めた。
コートの下で体が小さく震える。
私は昨日の天気予報を思い出す。
昼は日向だと温かさを感じるが、夜は一気に気温が下がると言っていた。
残業で帰る時間がいつもより遅くなったせいで、寒く暗い中帰宅しなければいけない。
「せめて誰かが隣にいてくれたら少しは気が紛れるのに……」
なんて、叶いもしないことを考える。
恋人いない歴=年齢。友達もほとんどいない。そんな私の傍にいてくれる人はいない。
せいぜい帰ったら居候中の弟がいるくらい。
「帰ろ、帰ろ」
今日は金曜日だ。明日は休み。今週も私は頑張った。帰ったらビールでも飲もう。
私は自分へのご褒美を考えながら、コートのポケットに手を突っ込んで足早に駅に向かった。
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