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ペンを片手に震えている。
どうしよう、迷う。
どっちだったか思い出せなくて、ペン先が震えている。右か左か。どちらが君の名字だったか。君が好きだと言った色は。君が持っていた花は。
君に初めて会ったのは、雪の日だった。真っ白な世界に君は佇んでいた。傘も刺さずに、空を見上げて。その風景があまりに美しく、たまに思い出しては君を思う。
だから僕は震えていた。
君の名字は。君の好きな色は。君が持っていた花は。
思い出せない自分に震えている。
窓には水滴。
その先には真っ白な世界。
「赤いよ」
後ろから声がした。ほんのり笑いを含んだその声に、僕はロウソクに揺れる火を思う。
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